翻訳・通訳

翻訳の校正は簡単なのか?

翻訳の校正はラクなのか
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こんにちは、Tomoko です。

「校正お願いします。訳してあるからラクだと思う。」

「ん?いまラクって言った?」(心の声)

校正の依頼に来るときたまーにこんなことが起こります。確かに翻訳するときと比べたら校正の方が目に見える作業は少なくなります。それは、タイピング。確かに、表面では忙しさが減るんですが、頭の中は変わらず忙しいと思っています。

校正ってそこまでラクじゃなくない?っていう愚痴です。
時間が許せばお付き合いください。

翻訳と校正の工程

翻訳のざっくり工程は

  1. 原文を理解する
  2. 翻訳する
  3. 訳が適切か見直す

校正のざっくり工程は

  1. 原文を理解する
  2. 訳文を理解する
  3. 訳が適切か見ていく

こうやって見ると工程のは変わりません。

この時点で「ラク」ではないと思います。

校正の大変なところ

1. 自分以外の誰かが作成した文書を理解しないといけない

大変なこと1つめは、自分以外の誰かが作成した文書を理解しないといけないところです。

翻訳だったら原文を理解して理解したことを訳文にしていきます。だから仕事を完成させるためにしっかり読み込むのは原文のみでいいです。

校正では原文に加えて自分以外の誰か(機械翻訳も含む)の訳文を理解する必要があります。

  • 誤字脱字がないか
  • 文法が適切か
  • 単語が適切か
  • そもそも原文と内容が合っているか

これら含めて校正と考えています。

特に「原文と内容が合っているか」に気づくには誰かの訳文も理解する必要があるので、「内容を理解する」という大事な工程が2倍になるのだから校正はラクではないと思うのです。

2. 自分の知識や経験で仕事の難しさが変わる

大変なこと2つめは、自分の知識や経験で校正という仕事の難しさが変わることです。

翻訳には単純な英語以外にも必要な知識があります。例えば:

  • 技術英語への精通の程度
  • 翻訳者の原文理解の程度
  • 業界や専門性への理解の程度

原文と翻訳された文章を読む中で、自分はその人と比較して

  • 技術英語に精通しているのか、そうでないのか
  • 原文を理解しているのか、そうでないのか
  • 業界や専門性は理解しているのか、そうでないのか

みたいなポジショニングもしています。

自分よりも訳した人が原文の内容に精通していたらその人の方が正しい訳をしてるかもしれないし、それでいて翻訳のスキルもその人の方が高かったら下手に校正できない気持ちに駆られます。

バスケの初心者がバスケが上手い人に教えることはできません。

逆に中級者であれば初心者に教えられますし、上級者なら中級者の弱点を理解してアドバイスすることもできます。そんな感覚です。

翻訳だったら訳文を作成したのは自分なので原文内容の理解度も翻訳スキルも自分と等身大なのでそういう意味では気楽です。自分で完結する翻訳は、自然と主観的になり勝ちなので、こっちはこっちで別の難しさがあるのですが…。

やりがいが減っているような

当たり前ですが校正の仕事では「自分で訳す」という作業が極端に減ります。

「自分で訳す」というのが翻訳の面白い部分だったりるので、やりがいは減ったかなと感じます。しかも、校正だと短納期での依頼になりがちなので、やりがいは減ってストレスは増えるという現象が起きている気がします。

フリーランスの方で単価も減るって言う方もいますし、校正ってモチベーション的にも報酬的にも、「なんだかなあ」っていう気持ちになりやすいかもしれません。

翻訳で大切にしていることは変わらない

気持ちが落ち込むこともありましたが、翻訳という仕事の芯はより大切にしようと前向きな気持ちもあります。

大切にしたいのは、人と人のつながりをサポートすることです。

機械的に翻訳が正しいか間違っているかどうかも大切ですが、それだけでは仕事は円滑に進みません。

言葉や文化の壁があるからこそ、以下のようなことも大切だと思っています。

  • 原文作成者のクセの理解する
  • 関係者の英語理解度の把握する
  • 関係者の仕事への理解度の把握する
  • 相手の母国語や文化への理解や興味を持つ

※社内翻訳通訳が多かったので、社外やフリーランスの方と仕事する場合は、また異なる視点が求められるかもしれません。

こうした配慮を意識することで、翻訳は単なる言語変換ではなく、人と人の理解をつなぐ仕事になると考えています。

さいごに

校正が簡単と言われるのって、Microsoft Wordとかに校正機能があって自動で校正してくれるから、依頼者の「校正」=「単語チェック」みたいな理解になってしまっているのでしょうか…。

それは悔しいので、コミュニケーションのズレになりそうな翻訳を見つけたら積極的に「こういう理由でおかしな箇所があったので修正しました」と伝えるようにしています。

他人の仕事がラクに見えるときってありますよね。
隣の芝が青いみたいな。

おまけ

「ラクだと思うから」と言われたときの表情

↓表向きの表情

(*´ω`*)

↓心の中

( ゚Д゚メ)